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2014年10月17日金曜日

Life



私はテレビは観たいものがあるときだけ、録画して、あとで観ます。
好きな映画を観られたら、テレビの存在はなくても暮らせるくらい。
でも、旦那さんはテレビが大好き。朝、テレビをつけたまま出勤してしまうときがあります。
ある朝、そのまますぐに消さずにいたら、「今日の料理 ビギナーズ」という番組が始まりました。

父は、最後の闘病生活を送っていたとき、入退院を繰り返していましたが、そのあいだに料理に目覚め、
病院では料理番組のレシピのメモをとって、「家に帰ったら作りたい」と言いました。
でもそれは、抜けているところが多くて実際に再現するのはむずかしいメモになっていたので、
本になっている「今日の料理 ビギナーズ」を買って、体調のいいときは、料理を楽しんでいました。

夏、亡くなるほんの数日前、もう魂は半分抜けているような、会話はできないし、
耳元で大声で話したら理解はしているのかな、という状態だったとき、
「今日の料理 ビギナーズ」最新号を買ってきて、「パーパ、きょうのりょうりー!かってきたよー!!」
耳元で、ゆっくり、かなり大きな声で話しかけました。

本を顔の前に、見えるように立てて、両手に握らせてあげると、もう目は見えていなかったと思うけど、
父は、かすかな息に混じったような、声というより小さな息で、「そうか」 わずかに口が動いて、かすかにうなずきました。
「あ、届いた!」 その本は、棺に入れました。

だれかに話すでもない、たくさんの経験したことを、心にしまっては、ときどき開いて泣いたり笑ったり。
あーあ、こんな番組、観るつもりなかったのに始まっちゃったから、目から何かがあふれてきて
一日の始まりが台無しじゃない。
やっぱりテレビの流し見は、危険だな。笑



*Photo source: Laetitia Casta for Elle France February 1999
Photography by Dominique Issermann





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